リフレクションは仕掛けられるか
新聞の投書欄を読んでいて、あれ、見覚えのある名前だと思い当たった。ゼミは違うけれど卒業生だ。
もう小学校教員になって5年目くらいだろうか。初任期をおおよそ過ぎ、「一人前」に仕事をできるようになっていることだろう。 彼女は記している。「五年日記」をつけており三年目になるが、子どもとのやりとりで、ともすれば「やりがい」のあり過ぎる慌しい日々を送る中、以前の日記を読み返すと、今とは違う受け止めをしていることに気づかされる、と。読み返すことで、また頑張ろうと元気をもらえるのだろう。 大変だろうが、まずは元気に過ごしている様子を知るに嬉しく思うと同時に、こうも考える。こうした振り返りのできる教員は、たとえば日記というツールを通して、リフレクションできる仕掛けを自ら設定しているのではないだろうか。 教員の職能成長・職能発達にとって、リフレクションの重要性が指摘されて久しく、実習を終えた学生の振り返り、校内研修での話し合い、集合研修での自己省察と、何でもリフレクション状態にまで陥っている(ゼミ修了生の嵯峨根早紀(2017)「教員の力量向上における『reflection』議論の分析ー1990年以降の小学校教員を対象にした文献を中心にして」を参照)。そこで問われるべきは、この言葉が濫用されているという点もさることながら、それがどのようなものであれ、「振り返りの機会を設定すれば、反省的思考が促される」と想定することが誤りではないだろうか。 上の彼女のように、自分の様子を観察し、周りとの関わりを記述する姿勢や能力を持っている教員こそが、リフレクションの機会を得ているのであり、そうした場やチャンネルを本人以外が設けても、はたして有意義だろうか。「研修に来てほしい教員は来ず、来なくてもいい教員が研修に来てくれる」とボヤいた研修担当の指導主事の言葉を思い返すと、職能成長はつまるところ、その人に相当程度まで依るのであって、周りから研修や修養と持ちかけても、きっとダメなのだろうなあと思わされる。 と同時に、その人の内的な指向性にまで迫るような問いかけがあれば、リフレクションが促されるかもしれない、と考えるならば、それを担う講師や主任あるいは管理職が、自身を開示して問題を挟み、相手と対峙する必要があるとも感じる。はたして、そんな能力や覚悟は当事者にあるだろうか。 教職が人格的な行為であり、その人ならではの性格を色濃く帯びていることを踏まえれば、通り一遍の質問や、マニュアル化された手順で、相手が変わることが期待できるはずもない。やり方や手法として研修や講習が設計されること自体が拙い、とも知るべきではないだろうか。
by walk41
| 2017-08-26 12:47
| 学校教育のあれこれ
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