香川県にある瀬戸内海歴史民俗資料館を訪れた。県立施設とのことだが入館料は無料、大きな実物と見応えのある資料が多かった。
かつての農業、林業、水産業(この地方では塩業も含まれる)に関わる諸々、今はなくなってしまった仕事、すっかり機械化された仕事を思い起こさせる展示が続く。「柴刈り」が「芝刈り」と勘違いされる現代には、驚くべき事実ばかりだ。
こうした労働のもとで、信仰が位置づいていたことを知れたのが、大きな収穫だった。その一つは恵比寿さん(エビスサン)のことである。漁が盛んだったこの地で、恵比寿さんが大漁を願う神様とされていたことを初めて知った。だから、恵比寿さんは鯛を抱いているのか。また、水不足に悩まされてきた讃岐地方では、雨乞いに関わる神様がまつられたり、麦わらで作った大きな龍が昭和10年代までも練り歩いたという。
科学技術の発展と「見える化」の進行により、こうした信仰も今では歴史的なものになりつつあるが、「見えない」ものへの想像力、ひいては畏れや慎みも忘れてはならないと思わされた。