変化にかかる時間の意義
大学院の授業で学生たちに問いかける。「学校でもPDCAサイクル論がかまびすしいけれど、そこで変わっていくという変化のスピードについて、どのように考えているんだろうか」と。
少し説明する。サイクルとは局面ごとに変化することを前提に組み立てられている。Plan-Do-Check-Actionというように。つまり、計画と実施(実践)の間には時間差が想定されており、順番に各局面を経ていくイメージがあるのだ。さて、それはどれほどの長さなのだろうか。 学校の1年間に即して見れば、新年度(実際には前年度の3学期くらいから始まっているのだけれど)に員数と組織、具体的スケジュールが計画され、活動が始まる。各教室では学級びらき、授業びらきが行われていくように。では、それぞれの計画が実施に移るにはどれだけの時間が必要あるいは望ましいと想定されているのだろう。また、ある計画の実施過程中に、別の計画が影響を受けて、計画を立てる段階ですでにcheck(点検や修正)が入ることはないのだろうか。だとすれば、サイクルの順番はPDCAとは限らず、CPD…という場合もあるのでは。 局面間の時間を想定しないでサイクルを語ると、つまるところ「何でもあり」となり、PDCA、PDS、R-PDCA…と思いついた人の数だけアルファベットが並ぶことになる。それでは何の説明にもならない。また、仮にある学校がどれかに当てはまったとしても、それが普遍性を持つとはとても言えない。つまり、こうしたサイクル論は学校を語る上で意味を持たない。 またより重要なことは、「児童・生徒の成長・発達」に寄与するための学校という点から言って、そこでの活動は彼ら/彼女らの変化とどのように関わっているかである。ある教科の一つの単元をたとえば10時間で扱うと基準があった場合、これは8時間で終えることができれば「望ましい授業」の一つなのだろうか。あるいは、45分/50分の授業を30分で終わることができれば、これも「いい授業」と見なせるのだろうか。もしこれに「その通り」と答える御仁がいれば、「じっくり考える」「対話的に学ぶ」「わからなさを実感する」など、自分は無縁の立場だと表明しなければならない。 赤ん坊が歩き始めるのに一年間かかるとすれば、これを早めることはどれほど可能なのか、また望ましいことなのだろうか。同様に、学びが大切と唱道されるけれど、そこでのスピード(速さ)はどの程度を想定しているのだろうか。ゆっくり学ぶ、行きつ戻りつ学ぶことを視野に入れるならば、標準時数や時間など参考程度になれば御の字だと言うべきだろう。教育や学習は「変わること」を求める活動であるから、そのベクトル(方向と強さ、速さ)を抜きに議論することはできないはずだが、これが取り上げられずにいるということ自体が、教育と学習の曖昧性、偶有性という性格を示しているのである。
by walk41
| 2017-12-07 10:09
| 身体
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