学校・教職員の現在と近未来-榊原禎宏のブログ

ドイツにおける国家(Staat)

b0250023_22055302.png

ドイツの教育や文化・芸術事情を、日本語で紹介するページは少なくないが、そこには誤った紹介も見られる。たとえば、新国立劇場のHP中(https://www.nntt.jac.go.jp/centre/library/theatre_w/06.html)、次のような記述がある。

「ドイツにナショナルシアターはない?」という小見出しの中、こう記されている。「…戦後、ドイツは東西に分断されたが、西ドイツではナチス時代の苦い過去を繰り返さないために、文化や教育は地方自治体(州、市)が運営を担い、国家は介入しないという「州の文化高権」が確立された。国の憲法にあたる基本法で表現の自由の理念を掲げ、その実施は州が責任を負う仕組みだ。言い換えれば、国は文化行政を州にまかせ、口も金も出さない。…」

これは正しい紹介ではない。連邦制を採用するドイツにおいて、多くの権限は州(Land)に属する(連邦基本法、第30条「この基本法に規定または許可のない限り、国家の権限の行使と国家の責務の実現は州の事項である」)。この点では、州こそが国家(Staat)であり、連邦と州の関係は、中央政府に対する地方自治体ではない。

たとえば、バーデン=ヴュルテンベルク州の州立美術館はStaatsgalerie(国立ギャラリー)と称するし、バイエルン州の州立劇場はStaatstheather(国立劇場)の名を冠している。あるいは、教員になるための試験はStaatsexamen(国家試験)と呼ばれるが、これは州ごとに行われ資格が付与される。さらに、州の教員研修センターはStaatliches Seminar(国立セミナー)である。いずれも州すなわち国家を意味する。

州よりも大きな政府(連邦)があるから、そちらが国で州は地方だと、ひょっとしたら素朴に思ったのかもしれないけれど、ドイツの場合はそうではない。丁寧に見なければならないと、自戒も込めて思わされる。

[PR]
by walk41 | 2017-12-25 06:10 | ドイツのこと | Comments(0)
<< 効率化とサービスは両立するか クリスマスイブ >>



教育学の一分野、学校とその経営について考えます。
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
メモ帳
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
「させていただく」
at 2018-01-22 15:29
正直
at 2018-01-22 10:37
アニミズムと神社
at 2018-01-21 17:20
見て見ぬふりをしている自分
at 2018-01-20 23:26
「失礼な学生」
at 2018-01-20 00:30
標準学力テスト
at 2018-01-18 11:25
ドイツ常設文部大臣会議(KM..
at 2018-01-17 17:07
お手軽な電子メール
at 2018-01-16 09:58
学校教員の業務負担論
at 2018-01-16 08:48
長期休業の集中と分散
at 2018-01-14 12:42
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧