日本経済新聞の「地球回覧」(2012.2.5)は、「技術先進国ドイツの焦燥」。
ドイツではOECDによるテストの成績が振るわなかったこと(「PISAショック」)を背景に、従来の教育システムでは十分な学力がついていないのでは、と疑問が産業界で高まっていると報じる。
ドイツの学校教育制度は公立が中心で、それが顕著な大学は、ほとんどが公立(州立)である。そこに都市部に限られるだろうが、「私立ブームが起きている」と書かれるのだから、小さくない変化かもしれない。補習校(放課後に私的に通う塾のようなもの、Nachhilfsschule と思われる)に「新たに年15億ユーロの市場が誕生した」とも記されている。
公立学校批判が続く日本と似ている点もあるだろうが、違うだろう点も踏まえなければならない。
1.ドイツでは義務教育修了資格(9年)、中等教育修了資格(10年)、大学入学資格(12ないし13年)のいずれも、州の文部省の定める試験を経るのに対して、日本では校長の認証のみであり、卒業資格の意味合いが異なる。言い換えれば、学校を通過する際の重点が、前者は卒業時の絶対的な評価に置かれるのに対して、後者は入学時の相対的な評価に求められがちである。
2.ドイツでの生徒の学力問題は、技術革新の力の危機としても理解されており、それぞれの学校修了の通過率をいかに高めるかが議論になるのに対して、日本では上位層をどこまで「伸ばす」かに関心が高く、「落ちこぼれ」の生徒の底上げが、必ずしも政策課題として、たとえば数値目標などとして注視されていないように思われる。
ここで、1と2を合わせて考えると、卒業主義は「最低限」の学力保証を課題に捉えがちだが、入学主義はこれが等閑視されがち、と言えないだろうか。
さて、私たちはどちらを選びたいのだろう。