60年近く維持されてきた組織に大なたをふるい、局所適材の弊害を改めたというアルプス電気の記事を読んだ(日経ビジネス、2012年3月12日号)。
「事業部は自分たちの損益を最優先しがちだった」、つまり、事業部の自立性・独立性が高く、技術や人材を囲い込む、つまり、事業部を単位とした局所最適が進み、全体最適には至っていなかったのだという。
素人目には、製品の提供、顧客満足、利益確保、と目標が全体に集約されやすいように見える企業ですら、こうした状況に陥ることがあるのを知ると、「製品」「完成品」が捉えどころなく、顧客も誰かがよくわからず、利益も何なのかがはっきりしない学校教育という活動では、局所に関心が向きがちなのは当然とも思える。
曰く、「学校教育目標にもとづき、個々の教育実践を」「目指す子ども像の実現をめざして」「保護者・地域の信頼に応えられる学校づくりを」と、教育委員会、学校管理職は声を大に語るが、それが詰まるところ、具体化されず、いつも「職員の意識改革」というアイディアしか出てこないのは、むべなるかな。
さて、アルプス電気の場合は、拠点数を減らすとともに、地方拠点にいる担当部長が週に2回、本社の大部屋で勤務する制度を設けるなど、人事の流動化を図ることで、風通しの良い組織づくりを目指しているという。
ティームティーチング、学級担任の適宜交代、プロジェクト型の分掌、「一日校長」など、思いつかないことはないけれど、問題は、それらをどれほど実際にできるかということ。「めんどうくさい」「ちょっと無理やろう」「そんなのは嫌だ」と少なくない職員、とくに教員が思うとすれば、その直観の背景を確かめなければならない。
「そんなことを言っているからダメなんだ」と叱咤激励しても、人は動かないだろうから。なかでも、職場の大半が大学卒業という偏った学歴構成になっている学校では「頑固者」が多いので、それも踏まえて対応しないとね。