人気ブログランキング | 話題のタグを見る

学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

議論の交通整理

外国の教員養成について訪問調査をした報告の会に参加した。参加した方それぞれの印象は興味深く聴いたが、どうも元気が出ない。

というのも、一人一人が工夫できそうなこと、各々の大学でやってみれそうなこと、国の政策や法律の改正を要すること、といった区分けができていないので、何を参考にしてよいのかがわからないのだ。

もう一つは、その国を訪れた理由がよくわからず、かたや国際学力調査で優秀だから、かたや学校教育の「先進」国らしいから、とどうも歯切れが悪い。「私の知り合いがいるから」でいいんとちゃうのかな。

まとめに世話人の方も話されていたが、現地訪問というスタイルは(外国であるか国内であるかにかかわらず)、標準的、平均的な学校にはなかなか行けないという限界がある。紹介する方がどうしても「いい格好」をするからだ。くわえて、何かすごいことがそこにはあるはずだという訪問者のバイアス(歪み)も伴うから、もともと「正確に」捉えるなど期待できるはずもない。ちょうど、パリを訪れてエッフェル塔の前で写真を撮るようなもの、「やっぱりそこにあった」という域を出ないのだから。

それにしても、議論の仕方をしっかり組んでおく必要があると強く感じる。中教審などもきっとそうなのだろうけれど、諮問されたら大筋はすでにできあがっていて、会合を繰り返し開くことで、正統化、「お墨付き」を与えるという流れなんやね。

たとえば、教員養成の高度化としての修士課程の修了資格、これが「学力」の高い国々では標準的やって? PISAテストで好成績を収めている、香港、韓国、シンガポール、ニュージーランド…。

「香港の教員養成は日本に遅れをとっており、大学を卒業し教員養成訓練を受けた者だけを採用するようになったのはごく最近のことである」(「日本と香港における高等教育と教員養成」『名古屋高等教育研究』4号、2004)、

「初等教員の養成は、国立の教育大学校など限られた大学で行われているが、一方、中等教員の養成は師範大学および一般大学の教職課程で行われている分、レベルにばらつきがあるという」(日韓の教員養成制度改革に関する研究会、2011.3.3)、

「大学の学位レベルで教員養成・研修を扱う「国立教育学院」における教員養成」(「シンガポールの教員養成における規律指導論」『福岡大学人文論叢』40-2)、

「教育大学(College of Education)は、教員養成のための専門機関であり、教職を目指す学生は教育大学へ在籍する。財政上の理由と進学者数の減少から、大学機関との統合を進めている。修学期間は1年~2年。専攻課程により大学卒業後に教育大学へ進学する者と、高等学校卒業後に教育大学へ進学する者とが存在する。ニュージーランドの教員職は免許制ではないため、一人の教員が異なる複数の教科を担当することもある」(wikipedia)、

とgoogleれば挙がるが…。

どんなデータを見てそんな話をしてるんやろうか。まったく不思議や。データは関係ないんや、と思えばすっきりするんやろうけど。改革論って、そうやってできあがっていってかまへんのん?
by walk41 | 2012-06-01 17:38 | ことばのこと | Comments(2)
Commented at 2012-06-02 23:57 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by walk41 at 2012-06-04 00:07
コメントをありがとう。

いつでもどこでも情報が入手できる現在、何を備えることが「高度化」になるのか、という質問と受け止めるならば、そうですね、そこでは、教員としての、という側面と、教職としての、という側面に分けて考える必要があると考えます。

つまり、前者は学校で実際に仕事をしていく上で求められる能力、であるのに対して、後者は社会的に教職がこのようにあるということを説明する上での学歴や資格、です。

後者は職業威信にも関わり、人々がそのくらいのもの、という何となくのイメージを支えるものなので、大学卒業や修士課程修了といったものでよいのですが、前者を決めることはやっかいです。学校種、学校規模、地域性、そして何より教職員と児童・生徒が一日としてまったく同じ様子ということはありませんから、どんな準備をしておけばしっかりと対応できる、と言うものをなかなか揃えられないのです。

その曖昧さが学校教育の魅力の一つでもある、と思えるのであれば、そこで働く教職員の資質や力量といったものの理解を深める手がかりを得ることができるでしょう。
<< 「あっ、榊原先生」 学生を見ることの難しさ >>



榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
カテゴリ
以前の記事
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
フォロー中のブログ
最新のコメント
共著論文、掲載&公刊され..
by 土肥いつき at 18:24
yoralyさま、はじめ..
by walk41 at 14:51
Hanna Arendt..
by yoraly at 18:58
はんすさま コメン..
by walk41 at 15:50
さかきばら先生、こんにち..
by はんす★ at 12:22
堀口くん、お久しぶりです..
by walk41 at 20:31
生徒の感情としては関係性..
by 堀口渉 at 00:33
さすらいの教師さま ..
by walk41 at 15:34
こういった事例を聞くに(..
by さすらいの教師 at 09:48
本ブログを拝読する中で、..
by さすらいの教師 at 10:27
メモ帳
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
こんなことがあるなんて
at 2024-03-21 21:31
サンクコスト効果
at 2024-03-20 07:13
わかりにくい
at 2024-03-11 20:15
人類
at 2024-03-09 07:42
トランプ
at 2024-02-29 17:15
それぞれの学校
at 2024-02-27 08:28
「教員不足」とその対応
at 2024-02-22 07:31
fight-or-fligh..
at 2024-02-18 09:32
仰げば尊し
at 2024-02-15 15:51
誰にもどこでも承認される生徒..
at 2024-02-11 16:21
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧