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学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

3周遅れ

尾木直樹という人が「点数主義に明け暮れる日本が三周遅れ」、オランダの教育はすばらしいと、『いま「開国」の時、ニッポンの教育』(ほんの木、2009)でリヒテルズ直子という人と話しているという(実際に、本を確かめてはいないのだけれど)。ちょうど外国の学校訪問の報告会でも同様の話が出たから、そんなん言うてる人がいるんやと思った次第。

21世紀も10年が経ったというのに、今なおこんな陳腐な喩えをする人がいることに、まず驚かされるし、それを引用したり、そうなんやってと話す人に、もっとびっくりさせられる。ほんま、大丈夫?

こんなん、ほとんど子どもだまし、こけおどしやん。

学校教育が3周遅れの日本やったら、オランダは3周先に行っているって? ご冗談でしょう。歴史、習俗から発想まで大きく違い、比較がまあ難しいと見るのが、良心的な研究者であって、1周を勝手に設定して、それで何周遅れてるやの進んでいるやの、なんて話をしようとする態度が問題外。誠実さのかけらも感じない(あっ、この人は評論家だったか)。

「いやあ、3周うんぬんはイメージで」なんて反応するかもしれないけれど、じゃあうかがいたい。どこが「先進」的なのでしょうか。入学試験がなくて卒業試験があること? はあ? ドイツもおおよそオランダと同じ仕組みだけれど、日常的に成績をつけられて、お尻を叩かれている様子を必ずしも良いと思わないなあ。入試がない分、学校での成績評定はかなり厳密で、初等学校ですら、「1」から「6」までの成績中、「1.3」とか「2.5」とか、細かに付けられる。成績が振るわなければ義務教育卒業資格を得られず、その結果、就職も難しい。中等学校で悪い成績が続いたら、転校を進められる、だからギムナジウムの教員あたりは「冷たい」と批判もされる。もちろん、原級留置(落第)もある。

日本だったら、3年間不登校でも卒業証書をもらえて、いちおう中学校卒業になる。だから、またその気になったらいつでも高校受験できる。卒業資格がなかったら、上級学校に行けない仕組みなんて、在学中で将来のことを決めてしまうということになるけど、それがええことなん? 落第して、年下の子たちと同じホームルームなんて、「先輩-後輩」文化が華やかな日本で我慢できるのん? 落第を決めた先生や学校は恨まれるかもしれないけれど、耐えられる? 

大学進学の際の卒業資格(Abitur)だって、受験できるのは2回まで、それに受からなければ大学に進めない。日本だったら、家計が許せば何年だって浪人できる。どっちがいいやろうか。 しかも、卒業資格の時の成績は確定されてしまうから、このあとどれだけ頑張っても点数は変わらない。低い点でAbiturをとってしまったら、人気のある学部や分野には事実上進めない。やり直しがきかないのだ。

つまり、ある仕組みを取り上げて、それが良い、悪いということ自体がムリ! とわかっていることから議論をするのが、今の作法なのに(どこかを探せば、パラダイスがある訳ではない、と割り切ること)、まことしやかな外国紹介をして、しかもそれを「~周」なんてサイクルがあるかのように話すなんて。あんたもう「戦犯」やで。

それにしても、こんなわけのわからん御仁を取り上げるNHKほか、マスメディア、あんたらにちゃんと見る目はないんか。「節穴」(差別用語?)か。 
by walk41 | 2012-06-02 15:17 | ことばのこと | Comments(0)
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榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
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