学校評価再論
学校の挙げた成果とは何か。今の学校評価のやり方は、これを適切に取り出すことに成功しているだろうか。
管見の限り、多くの学校評価は教職員がどんなことをしたか、取り組んだかに焦点が当てられ、多忙に拍車をかけることにもなっている。もちろん、それで生徒たちに発現するような成果に結びつけばよいのだけれど、教職員とくに教員による教育と生徒たちの学習との間にはどうしてもギャップが生じるため、教師の頑張りが子どもたちの意欲や学力に必ずしもつながらず、却って逆接すらしかねない場合もある。教師の「余計な一言」で子どものやる気を失わせることはまったく容易だからだ。このことは、繰り返し確かめられるべき点だろう。 以前の勤務校で、数学の専門の方だったがこんな話を聴いたことが印象深い。「学力って、学んだことではなくて、学ぼうとする力のことではないのだろうか」と。これまで獲得した力はこれからにも関連するだろうけれど、将来のことはあまりに未知数が多い。「老いては子にしたがえ」「後進おそるべし」との格言もある。注目すべきは今後だろう。 「じゃあ、生徒の好きにさせていいのか」「放っておけばよいのか」と反論を受けるかもしれないが、決してそう言っている訳ではない。生徒がまだ知らない世界-具体的な事物だけでなく、ものの見方や考え方-に誘うように、教員は適度な強度を持った壁になることができる。とても大切な役割だ。 「これって不思議やと思わへん」「どうしてこうなるんやろ」「なんでそんなふうに思うのん」と知識や発想を提供するとともに、既存のそれらを壊し組み立て直すメデイアや触媒(自分も変化するのだけれど)の位置を教員は占めることができる。だから、教師の働き方は、それを教えることを「当たり前」と見なさないようなメタ的な視点を持ちつつ、生徒に教育内容を示すこと、生徒の多様なものの見方と、ひいては行動を促すように問いかけ、励まし、伴走するように振る舞うことではないだろうか。 高校の教頭先生から、学園祭で発表すべくクラスを挙げて生徒たちが作ったDVDを頂戴した。学校の日常をユーモアたっぷりに示す映像からは、彼らが充分に相対的認識の感覚を持っており、観る人に楽しんでほしいホスピタリティ(思いやり)にあふれ、さらにこれらを表現する身体や道具を持ち得ていることがよく伝わる。とても楽しかった。 学校評価は生徒を見ること、生徒に聴くこと、そしてその様子を教職員にたずねることによってできるのだろう。それはおそらく、紙のアンケートを通じてよりも、ちょっと改まった場所で話を聴くこと、やりとりすることでいっそう確かめられる。「それでは客観的ではない」と不満の向きもあるだろうが、「良い学校」とは結局のところ、当事者の満足に拠るしかない。傍から「そんなんじゃない!」と声を荒げようとも、最終的には関係者とくに生徒の側にジャッジは任せられるのである。
by walk41
| 2012-12-17 11:30
| 学校教育のあれこれ
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