学校・教職員の現在と近未来-榊原禎宏のブログ

人格でリーダーシップを語ってはいけない

引き続き、大阪市立高校での体罰暴行による生徒の自殺事件。

件の部活動の顧問は、この学校に赴任して19年になるという。市教育委員会は、同一校での勤務を原則10年間と定めており、以前の校長から何度も異動を進められた顧問だったが、「学校に貢献したい」と残留、同校には職員42名中、体育科を中心に勤続10年を超える者が13名いるとのこと(毎日新聞、2013.1.13)。こんなに長期在職の職員が多ければ、テレビに映る同校長が気弱に見えるのも仕方ない。

すでに久しく以前、1998年中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」で、校長の同一校勤務年数の延長が提案されながら、平均値としてはまったく変化していない。少し古いが2009年度末定期人事異動の場合、校長の同一校平均在籍年数は、全国で2.6年、全学校種を均して見ると、平均4年を超える都道府県および政令指定都市は存在しない。ちなみに副校長・教頭については、平均2.7年と公表されている(文部科学省)。まったく、「笛吹けど踊らず」の状態である。中学校・高校では、入学した生徒が卒業を待つ前に交替してしまう速さだ。

これもやや古いが、中央教育審議会での審議資料に出された「人事異動対象となる同一校勤務年数について(小中学校)」によると、短いところでは「原則として同一校在職3年以上の者は異動の対象にするものとし」(京都府)などがあるが、多くの府県では、「同一校に6年以上勤務する者」(大分県)、「現任校に7年以上」(大阪府)、「同一校に10年以上の者は、努めて転任させる」(青森県)と、5、6,7年以上、最長で10年を基本的な転任対象としているようである。上の校長・教頭の長さと比べれば、教員の同一校在職の長いことは明瞭だ。

「学校管理職としてのリーダーシップ」と題した研修や講演は多いけれど、それを支える条件が伴わなければ、お説教に留まってしまう。ふりかえれば、思いつきのような放談が長く続いた、いや続いている。「校長としての厳しさと優しさ」「信念とビジョンとパッション」とか「校長はピッチャーで教頭はキャッチャー」「校長は船長」など、ちょっとお酒でも入ったら誰でも言えそうなことである。

せやから、教育評論家やのに大学の肩書きをも持つ輩も出てくるんやで。研究者やったら説教ちゃう、説明せんといかん。勘違いしたらあかんで。マスコミも世の中の人も。

こうした「要は、頑張れってことやろ」といった反応を引き起こすのではなく、校長という存在をどこまで説明出来るのか、その後に何が実践できることとして残るのかという筋道を辿らなければ、研修を受講する側にとっては迷惑きわまりない。

学校での存在感は、その場への馴染みによって大きく決まるとすれば(「えっ、来てまだ3年なん?、もう5年くらいはいると思ってたわ。存在感あるもん」)、校長にまずは長くいてもらうことだろう。数年前、地方学会の年次大会でも人事異動がテーマに取り上げられた際、私はその旨を主張したのだが、同じく登壇した校長経験者は「3年あれば十分」と返した。それで何かできる校長もいるだろうけれど、「学校管理職はお客さん、おとなしく、何もせんでおってもうたらいいから」とも言われていては、リーダーシップの発揮のしようもないのでは。

こんな状況が長く続いているのは、校長会も短期在職を支持しているからだろう。より多くの教員が校長になれる可能性をねらってなのか、と勘ぐられても仕方ない。体罰という名前の暴力が横行しないように、また働き過ぎもないように、職員を適正に管理することが「管理職」の仕事である。そうした「大きな態度」を取れるように、校長の同一校長期化は不可欠だろう。
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by walk41 | 2013-01-14 10:07 | 学校教育のあれこれ | Comments(2)
Commented by もくれん at 2013-01-14 10:49 x
校長の同一校長期化に同意します。
これまで、ほとんどが退職前2〜3年の校長と勤務してきました。
前例踏襲、大過なく、変化することを最小限に。問題がおきたら対処します。みなさんにおまかせします。
これでも、学校は動きます。
じっくりと話しあいながら仕事ができると楽しいだろうなと思うのですが。失敗できないと思われるのかもしれませんが難しいです。
Commented by walk41 at 2013-01-14 11:02
もくれんさん、コメントをありがとうございます。「大過なく」過ぎることを待っている人に、学校の革新を期待するというアンバランス、無理なことだと思います。

ちゃんと調べてからまたご報告しますが、私の知る限り、ドイツの校長は生涯1校の人が多く、長い人は20年以上務めます。だから、街の人が「あの校長先生ね」ってわかるのです。そんな彼の地でも「学校の自律性は名目だけ」と揶揄されたりするのに、日本で「自主性のある学校」など実現できる訳がない、とは私の主張です。
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教育学の一分野、学校とその経営について考えます。
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