学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

言葉あそびにならないために

学生の論文構想の発表を聴く。

多様あるいは多様化をキーワードにしているが、どうもわかりにくい。というのも、こうした言葉を公に用いている側が、具体的にはどういうことなのかを必ずしも念頭に置いて話していないことが明らかだからだ。

曰く、いろいろな履修コースを用意しましょう。さて、これは多様化だろうか。むしろ、送り先のコースを個人に先立って事前に決めてしまっている点では、画一化とも言うべきではないだろうか。

この反対に、たとえば普通科と特段の特色を打ち出さない、これは画一化だろうか。おそらくそうではないだろう。なぜって、どんな進路へと誘うかについて最後まで決定せず、モラトリアムとして悩む時間を提供しているのだから、むしろ多様化に備える態勢というべきである。

かくも、学校教育の言葉は、論理的な幅が広く(くだけていえば、いい加減)、だからこそ、手垢の付いたというように、聞き慣れてしまうと、違和感を感じなくなり、他の論理を受け付けにくくなる。これが教条的、決めつけ的、常套句と転じやすいのだ。

だから、聞き馴染んでいる言葉にいっそうの注意を払って、吟味してみること。同じ言葉なのに、正反対の2つの論理を見出すことはさして難しくないだろう。なのに、片方に肩入れしすぎると、反対が見えなくなる。かくして「正義の本家争い」が起こるのだが、どっちもそれなりに正しい可能性を見落としがちだ。

こうした点から、とりわけ為政者や行政官にはお願いしたい。どうとでも取れるような言葉をできるだけ少なくしてほしいと。伝聞だが、「生きる力」の英訳、The Zest for Living を聞いたイギリス人の中には、「まるで、保険会社のキャッチコピーみたいですね」と応じた人がいるという。そういうこともあるかもと踏まえながら、丁寧に議論する姿勢を保ちたいと思う。「印籠」を振りかざすごとく、政策用語を遣うのではなくて。
by walk41 | 2013-10-15 23:27 | ことばのこと | Comments(0)
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榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
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