LiNE 上で送られたメッセージに対して、読んだことが明らかだが、これに対して返信しないさまを、既読スルー、あるいは既読無視と称するらしい。
元々は、家族などの親密な関係上、メッセージに対する返事のいかんにかかわらず、まずは安心な状態かどうかを知る術として実装された機能だという。それが、LINE仲間が広がる中、当初の思惑とは異なる機能を果たすことになっているようだ。
読んだが敢えて返事をしないというコミュニケーションとして、あるいは、返事をしないという思いやりとして、はたまた、返事をしなければいけないというLINE疲れに至るまで、この仕掛けが利用者、なかでもヘビーユーザーと見なせる中高生に与える影響は大きいとされる。
だから、なおさら思う。「若者におけるコミュニケーション能力の低下」なんて、お喋りはいったい誰が言い出したことなのだろうか、と。彼らのコミュニケーション能力は群を抜いており、その細やかさ、注意力、表現の仕方のいずれも、相当に高度なものである。メッセージに応えない、沈黙するという非言語のコミュニケーションも駆使しながら、多くの関係者と実に長時間つきあっているのだから。
かくも、現代若者論や教育論といった類の話は、眉唾を幾層にも付けるのが大切なこと、にもかかわらず、「わかったようなこと」を言いたがる大人、とりわけ評論家、ときに「研究者」がいることを踏まえるべきと教えられる。SNSを駆使する彼らのどこがコミュニケーション能力不足なのか、そんな愚論が彼らに相手にされていないという点から、自分たちのコミュニケーション能力が低いことに気づくこと、話はそれからだろう。