人気ブログランキング | 話題のタグを見る

学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

どれくらい「きっちり」?

7月に訪れたドイツの中等学校の様子を少しずつ整理している。それなりに注目して、なるべく多くのことを書き留め、写真も撮らせてもらい、インタビューもさせてもらったけれど、しっかりと書き起こすことは容易ではない。あんまり見ていなかったのかなあと、反省させられることも少なからずである。

さて、そんな作業の中で気づかされることがある。それは、事例校における大らかさとも言えるし、厳しく言えば、アバウトさとも言える部分である。たとえば、月曜日の一時間目は、文書上はWochenstart(週のスタート)とあるのに、ある教室ではWochenbeginnと書いてある。同じ意味と言えばそうなので、大したことではないのだけれど、一応、制度上の言葉なのだから統一してもいいのではとも思う。ちなみに、別のクラスでは「ドイツ語」と記されており、これは間違っているのではと思うけれど、そのクラスにとっては気になることではないようだ。

あるいは、授業と授業の間は休み時間になるが、それが時間割上は示されていない。時間が飛んでいるのだ。ある授業の終わりと次の授業の始まりの間が、休み時間ということになる、という暗黙の了解があるのだろう。日本ならばおそらく、何の時間かわからないような状態で置かれることはなく、登校から下校まで全ての時間がきっちりと明記されてるのが普通では。

表記の仕方や時間の管理が、その場が「きっちり」しているかどうかの物差しと見なせば、生徒の名札が黒板に上下逆さまに貼り付けてあったり、係り活動が替わったあと、新たに札を作らないで前の札に書き足す(前の生徒の名前は斜線で消される)といった扱いは、「きっちり」していない。ところが、ところ変われば、そういう「きっちり」さもありうるし、それでもいいのではないかと思えてくるのが、外国のことを知る一つの意味だろう。

どれほど「きっちり」しているべきかは必ずしも決まっていない分だけ、どうするかを決めるのは、教育委員会の指導や保護者の要求もあるけれど、まずは個々の教員や教員グループの価値観と論理である。「うまく説明できないけれど、そうしないと何か落ち着かない」というあれこれ、それらが時に恣意的に、そして素朴に設定されているからこそ、疑い、疑問を呈することは困難だ。何しろ、「良かれ」と思ってやっているのだから、なぜ疑う必要があるだろうか。

なかなか気づかないけれど、それが自分たちの業務量や焦燥感に関わっているならば、そこから解放されること、それも多忙化問題への一つの対応だろう。とても難しいことだけれど。
by walk41 | 2014-09-06 16:52 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)
<< Does money make... 気づいてもらえる嬉しさ >>



榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
カテゴリ
以前の記事
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
フォロー中のブログ
最新のコメント
共著論文、掲載&公刊され..
by 土肥いつき at 18:24
yoralyさま、はじめ..
by walk41 at 14:51
Hanna Arendt..
by yoraly at 18:58
はんすさま コメン..
by walk41 at 15:50
さかきばら先生、こんにち..
by はんす★ at 12:22
堀口くん、お久しぶりです..
by walk41 at 20:31
生徒の感情としては関係性..
by 堀口渉 at 00:33
さすらいの教師さま ..
by walk41 at 15:34
こういった事例を聞くに(..
by さすらいの教師 at 09:48
本ブログを拝読する中で、..
by さすらいの教師 at 10:27
メモ帳
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
こんなことがあるなんて
at 2024-03-21 21:31
サンクコスト効果
at 2024-03-20 07:13
わかりにくい
at 2024-03-11 20:15
人類
at 2024-03-09 07:42
トランプ
at 2024-02-29 17:15
それぞれの学校
at 2024-02-27 08:28
「教員不足」とその対応
at 2024-02-22 07:31
fight-or-fligh..
at 2024-02-18 09:32
仰げば尊し
at 2024-02-15 15:51
誰にもどこでも承認される生徒..
at 2024-02-11 16:21
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧