秋も本格化、各地で行われているだろう祭りの一つ、ジャズフェスティバルに出かけた。広場でのステージを覗いたあと、小さなお店に入ったところ、これまた小さなスペースにジャズライブができるようにしつらえてある。
二人組みのライブが終わり、今度は三人のグループが演奏の準備を始めた。すると、このグループ目当てのお客さんが一番近くに席を取って、写真を撮り始めたのだ。
もちろん、ファンの心理はそうでない人におよそ分かるものではない、とは知っているつもりだ。それでもなお、グループをいわば激写続ける、30代半ばと思しき女性ファンの様子を見て、はなはだ失礼ながら、まるで映画のワンシーンかのように、つまりとてもユニークな構図に感じたことだった。
そのグループは30代、40代と思われる男女で、いわゆるビジュアルが際立つ訳では全くなく、かといって演奏が上手い、歌に惹かれるとも思われない。MCもボソボソで、これだけ小さな場なのに話し声がしっかり届かないほどである。演奏中、周りを見渡しても、聴いていると思われる人は、その追っかけ女性の他にいたかどうか。
30分ほどが経ち、持ち時間が尽きたのだろう。カンパ用の入れ物が用意されたけれど、入れたのは彼女ともう一人の男性のみ。その他の客は曲が終わっても拍手すら起きなかった。私個人としては、これまた失礼だが、演奏を聞かされ続けるのが辛かったので、やっと終わったとホッとしたくらいである。
趣味はまさに人さまざまだと言うけれど、多くの人が関心を持たない、恐らくは冴えないこのグループが、一人の女性に元気を与え、励ましたことも事実である。そしてこのグループにとっても、きっと同様だろう。
自分の物差しでわかったような気になるなと、これまたわかったようなことを思うけれど、事実はもっと深く広い、そんなことを思わされた夜だった。