福井県の公立中学校で起こった、教員らによる叱責を原因とする生徒の自殺、「指導死」とも新聞にあったが、いたたまれない。教育というものが暴力的な性格を持つことを思い起こさせるものである。
「学力日本一」とも言われるこの県だが、そのことは「優れた」授業方法や三世代同居といったことによるのではなく、やれと言われればともかく懸命に臨もうとする「素直な生徒」「従順な生徒」たちに支えられているのではないか、とすら思わされる。
敢えてステレオタイプ的に述べるならば、同じ中学生でありながら、いわゆる全国学力テストは成績に影響しないと聞くや、クラスの生徒の半分くらいが休んだ学校の現れた大阪府の中学生と、暴言や恫喝とも言える言葉による暴力を浴びてなお学校に通い続けた中学生がいかに違うか、を示す事案ではないだろうか。
今から10年少し前、フィンランドの教育が世界一と持ち上げた研究者たちがいたが、彼の地の「学力」ランキングが低下した現在、話題にできなくなってしまった。彼らはかつて発表したことを、どう総括したのだろう。
同じように、福井県の教育がなぜ優れているかと持ち上げる研究者が今いる。彼らはこの事件を聞いて、どんなことを思っているのだろうか。