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学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

50年近く前の校長像

ここ1年間ほど、人事異動について共同研究をしている。府立図書館が今日から開くということで、早速調べに行った。

その本題についての報告は今しばらくお待ち願うとして、資料ついでに調べられたことを一つお話ししたい。それは、1912年から1921年(明治45年から大正10年)の生まれで、当時ほぼ50歳代の校長だった人たち(現在の校長の年齢層とほとんど変わらない)の一側面を知れたということだ。今の校長たちの多くが、1950年代後半から1960年代後半生まれだから、今からおよそ半世紀前の校長たち、その生まれはほぼ一世紀前ということになる。

あくまでも京都市内に限った話だが、当時1970年の中学校数は60、校長は60人である。彼らの最終学歴はこのようであった。なお、私が旧制の学校制度にとんと暗いので、正確な分類ができず、学校を束ねることをご了解願いたい。

立命館大学関係 27

京都師範学校関係 15

國學院大学 3

…複数の卒業生を数えるのはこれらの学校のみ、あとは、検定と実教検定とある「検定制度」を経て教員資格を得た2人、残りはすべて1人で以下のとおりである。

仏教大学、京都薬科大学、早稲田大学、京都大学、同志社大学、東洋大学、竜谷大学(今の龍谷とは異なる表記)、大正大学、京都高等養糸学校(京都工芸繊維大学の前身)、あと私にはわからないのだが、表記通りに記すと、京工専、京中臨教、中教養、平壌師研、と続く。彼らが教育を受けたのは、日韓併合の時代でもあったのだと気づかされる。

立命館大学関係者が27/60と、実に45%を占めていたこと、京都師範学校(京都教育大学の前身)と合わせると2つの学校で70%、3人に2人以上が該当したという偏りぶりが明らかだ。これって何らかの政治的力学が強く働いていたのかしら。

また、彼らの教員免許状の分布も興味深い。複数の教科を持っていた人が少なくなく、60人中28人に上る。それらのうち、珍しいと思われるのは、「保体と社会」「社会と理科」「国語と英語」「数学と社会」「国語と美術」「理科と国語」「美術と技術」などである。当時の教職課程認定制度のもとでは、免許状が取りやすかったのかもしれない。でもどうやって履修したのだろうか? とも思う。

榊原・松村・浅田「教科から見た校長職の登用・配置に関する実証的研究 -京都府下の公立中学校を事例にして-(『京都教育大学紀要』1142009年)」では、19982007年度10年間における京都府・京都市の中学校校長438人をつぶさに追って、「保健・体育」の教員が全体の4分の1,教科ごとの教員の占有率から推定される期待値の2倍の校長が「保健・体育」の教員であったことを明らかにした。ところが、その30数年前の状況はまったく異なっていた。皆さんはどの教科出身の校長が多かったと予想するだろうか。


では正解を。多かった教科はダントツで「社会」(複数所持を含めて)30人だった。驚くべきことに、校長の2人に1人が社会の免許状を持っていたことになる。続いて多いのが「国語」20人、そして「理科」10人である。これに対して「保健・体育」は7人に留まっている。彼らの教諭時代には、生徒指導が学校の大きな課題とはなっておらず、「肉体言語派」が生徒指導主任を担う(そもそも、そんな主任が置かれていたのだろうか)という構図がなかったためではないか、とも邪推できる。

とまれ、数十年という時間の幅で見ると、文字通り隔世の感がする。当時の常識は今と大きく異なり、ならば今の常識もこれから確実に変わっていくことだろう。歴史を繙くことの面白さに触れたことだ。















by walk41 | 2018-01-05 18:14 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)
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榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
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