学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

ゲルピン

家人が遠藤周作の著作集を借りてきて読んでいる。その一つ「わたしが・棄てた・女」(1963年)の文中に、「ゲルピン」という言葉が出てくる。ドイツ語の貨幣(Geld)とピンチ(危機)あるいは「貧」の組み合わせと言われる、お金のない様を指した言葉だ。

それを見ていて思い出した。以前の勤務地で知り合った化学の教授で、ご自身が学生だった頃に、お金が足りない時に「ゲルピン」とよく言ったものだと話をしてくれた。遠藤周作のこの作品にも出てくるが、お嬢さん(ドイツ語でMaedchen)を「メッチェン」と言っていた件も聞いた。

私より20歳以上は上の方だったかと記憶する。その彼が学生だったときに、ドイツ語をかじっていたのは、きっと学生のシンボルでもあったのだろう。哲学、医学ほか多くの学問がドイツ語圏からやってきていた中、ドイツ語に引っかけた造語がなされたのは、ごく自然なことだったと思う。

「インテリ」(知識人)としてのステータスシンボルが、外国語を知っている、さらには操れることだったかつてと比べれば、今ははたして何がこれに相当するのだろうか。学生帽はもちろん学生服も着られなくなり(ごく一部の「お嬢さん大学」に残されるばかりとなり)、街に出れば誰が学生かわからないほどだ。

大学生が高校生の延長に位置づくだけならば、ステータスシンボルは不要である。こうした大衆化(民主化)されたことの良さを喜ぶべきか、頭でっかちでも「ちょっと違う」と思わせるものがなくなったことを嘆くべきか。ええっと、大学ってどんな場所でしたっけ。


by walk41 | 2018-01-26 22:12 | ことばのこと | Comments(0)
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榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
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