享保年間(1716-1736)に創業し、国の有形文化財に指定されているという宿に泊まりました。
いわゆる和風です。畳、襖、障子はもちろん、床の間の掛軸と生け花、立ち姿を見る鏡、衣紋掛け、欄間や鴨居、天袋もありました。縁側も。基本すべて木製で、黒光りする様子に年季を感じさせられる。いまやすっかり博物館ものでしょう。
鑑賞している限りは構わないのですが、使うとなると不便なことがよくわかります。椅子がないので立ち座りが面倒で、始めから布団を敷かれていたりすると全く手狭なのです。天井が低く圧迫感もたっぷり、時代物ゆえ仕方がないのですが、棚がないので物を置けず、いわゆるコンセントがほとんど見当たらない、とも言えるでしょう。
翻って21世紀の現在、電気プラグは必須ですし、収納スペースもないと困ります。また、身体がそう馴染んでいるからでしょうが、場所が決まった椅子とテーブルの方が動きやすいと思ってしまうのです。
つまるところ、私にとって和風建築は資料的に眺めるくらいが、ちょうど良いようです。異文化体験のひと時に、ちょっぴりくたびれました。