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学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

授業持ち時間数と勤務負担

教員についても「働き方改革」が叫ばれ、とはいうもののと、ため息をつくだろう教育委員会と学校はさぞかし困惑、苦悩していることかと思う。ここまで学校としての翼を広げたいま、収める術が見つからないからだ。

たとえば、中学校を想定すれば、教員には、部活動指導、不登校や「いじめ」を含む生徒指導と家庭訪問、3年生ならば進路指導などが、授業以外にのしかかってくる。その負荷は相当なものだろうと思う。しかも、自分だけでつもりができない、つまり相手次第、状況次第の面が強いことが、負担感を強めているのではないかと私などは思う。好みもあるだろうけれど、自分で仕切れない時間を過ごすことは、けっこうしんどい。

さて、それらに加えてと言うべきか、別題と言うべきか、授業に限って見た場合の、教員間の負荷をどう考えればいいかという難問がある。教科によって負担すべき授業数(持ち時間数)に幅があり、しかもその中身の違いも侮れないほどだからだ。たとえば、同じ時間数でも、授業中に説明をかなり要する教科、授業の前後に宿題のチェックや添削等をしなければならない教科があれば、これらとは違う時間の使い方をする教科もあるだろう。認知、感情、意思決定を含む身体的資源の消耗は、決して時間数だけで測れるものではない。

とはいえ、持ち時間数は一つの判断材料になる。何よりも、その時間分は拘束され、他のことはまずできない。自分の裁量の余地が小さくなる分、負荷は増すと見てよいからだ。

そんなことを思っていたら、ちゃんと調べてくれている統計に出合った。長野県教育委員会教学指導課が出している「学校経営概要のまとめ(小・中学校版)2017年度版」によれば、中学校教員の週持ち時間数別の割合は次のようである。同資料では最高グループと最低グループを除き、1時間刻みで示してくれているが、以下、大括りしてみる。

10時間以下、2.1%
11〜15時間、8.6%
16〜20時間、71.9%
21〜25時間、17.2%
26時間以上、0.2%

3分の2以上の教員が、16時間以上20時間以下に含まれる一方、15時間以下が10.7%、21時間以上が17.4%とそれなりにいると見れば、持ち時間数の幅はなくないと言えるだろう。ここを強調すれば、同じ職場に担当時数が2倍(近く)違う同僚がいる、しかも同じような年齢や学歴ならば給料もだいたい同じ、というのはなかなか複雑な気持ちになるのではないかと予想する。

議論とは多分にそうなのかもしれないけれど、授業の持ち時間だけで幅のある、これに校務分掌も乗っかってくる、一概に忙しい、ではすまない複雑な中で、教員は働いていると捉えるべきだろう。だから、教員のワークシェアリングとして、勤務時間に応じて処遇するという方式を日本でも導入すればといいと思う。その根拠のあることを示しているものとして、榊原禎宏ほか「教育職のワークシェアリングに関する一推計-小・中学校の事例分析から-」(『山梨大学教育人間科学部紀要』 4(1)/288-300 2002年)、榊原禎宏「パートタイム労働としての教職像-ドイツにおける教員の検討から-」(『京都教育大学紀要 117/35-49 2010年)を執筆している。ご高覧を願えれば嬉しい。





by walk41 | 2018-05-05 19:26 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)
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榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
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