学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

「教育上の自由」を使いこなすことの難しさ

十数年前のこと、中学校の校則では「買い食い禁止」なのに、対外試合の帰りなどにポケットマネーで部員にお菓子を買い与えていた教員がいた、という話を元生徒から聞いたと現職の教員たちに話したら、8年前の経験だが、当時勤めていた学校でも似たようなことがあったと話してくれた。

ある教員は、子どもを褒めるときに、教室内で自腹で用意したお菓子を配っていたのだという。じきに他のクラスの子どもが知ることになり、自分たちの担任にせがんだため、やむなく同じようなことをしたり、それでも問題になったので、教員間で話をして、「与えていいのは、シールまで」と決めたそうだ。

こんな話も聞いた。児童からバレンタインチョコをもらった教員がお礼をしていたら、「この先生はお返しが来る」と有名になり、もらうチョコの数が激増。すると、周りの教員から煙たがれ、結局お返しはなくなったのだとか。

うーむ。悩ましいテーマだ。なぜなら、教育業務の対象は、大抵はいわばまだ年端もいかない子どもたち、彼ら/彼女らが、好意を持った教員に何か渡したいと思うのはある意味で自然なことであり、また教員も、そうした児童生徒に何かしたいと思ってしまうこともわからないではないからだ。

けれど、教員の業務はお菓子を配ることではないし、ましてや歓心を買うために何かを与えることでもない。だから、どうしても生じる個々の裁量(状況認識、選択肢の用意、判断、行為という一連の活動)をうまく活かすこと、それが「教育上の自由」に当たるのだが、これを自分の思うままに、とか、自分を疑うことなく、と「自由」にしていいんだということでは、拙い結果を導きかねない。

あれこれのハラスメントやさらには暴行、暴言に対しては、厳しく戒めが言われるけれど、食べ物その他によって媚びを売ったり、贔屓を思わせたり、迎合することもまた自制が強く求められるのだろう。自律性の重要性はまま唱導されるけれど、それを適切に駆使するのは、決して容易でないと思わされる。



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by walk41 | 2018-05-11 16:53 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)
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