日本語として定着しているパリジェンヌ、パリ地方の女性という意味だが、「ジェンヌ」になったのは、Paris の“s“に引っ張られたからであり、「ジェンヌ」がオシャレとか美しいという意味はない。なお、宝塚歌劇団の女性を呼ぶならば、「タカラジェンヌ」ではなく「タカライエンネ(Takaraienne)」あたりが適切ということになる。
また、女性のイメージから、パリジェンヌという洋菓子店やケーキ名もあるが、フランス語ではgâteauやcake(ケーキ)は男性名詞なので、パリジャン(あるいはパリジエ)の方が相応しい。もっとも、torte(トルテ)は女性名詞だ。
ドイツ語でのGelände(グランド)やKarte (カード)もそうだが、前者がもっぱらスキー場のゲレンデ、後者が医学用のカルテを指す日本語になっているように、以前の意味を離れて、あるいは限定してと、ことばの意味が変わっていく様がとても面白い。これらを指して、「パリジェンヌなんておかしな言い方」と叫んでも仕方ないしね。不思議だねと感心していればいいのではないだろうか。