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学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

活発なゼミ beteiligtes Seminar

いまお世話になっている南ドイツの大学では、学部生が中心のゼミナールにも参加させてもらっている。卒論の一つ手前の授業と言ってよいだろう。

学期末が近づき、授業もいよいよ大詰め。今回は19人の学生が発表者の提案を受けて議論を行った。テーマは「平和教育の理論と実際」と難しい内容だったが、前半は担当の3人の学生が、平和教育の系譜と原則について、パワーポイントスライドを示しながら説明した。次いで、これを学校で実践するには何が障壁なのか、また、既存の条件を無視してファンタジーを描くならば、どのような発想や方略があるのかと問いかけ、配られたマジックと色画用紙を用いながら、個人あるいは数人のグループで考える時間が与えられた。その後、椅子を車座に並べて、全体で議論するように授業は進められた。

私の見たところ、学生のプレゼンテーションが特別に上手かったというわけではなく、また、投げかけられた問いが優れて焦点化されていたとも思われなかった。けれども、ゼミに参加した学生たちの懸命さを大いに感じた。大学教員もひとりの参加者として話すのが精々で、初めからそのようには考えていないことだろうが、指導的役割を特段果たそうとつもりしているわけでもなさそうだった。つまり、教員の出番が要らないくらいに、多くの学生は主張したがり、また聴きたがっていた様子だったのである。最後に担当者から短いコメントがあり、拍手で授業は終わった。

今回に限らず、学生の話ぶりには感心させられる。幼い頃から、主張しなければいけない環境もあるかもしれないし、中等学校などで設定されるプロジェクト学習の効果かもしれない。あるいは、現職教員や修士課程の学生の参加があることも幸いしていると思う。そして何よりも、教員に近々なっていく身として、自分にとって重要なテーマと捉えていることが、この熱意を生み出しているのではないかと思われた。次の発言を予約するべく、いま話をしている最中に、手を挙げて待っている学生の姿も印象的だった。

大学でも教授法や授業の進め方といった議論はあるが、その大元は学生のありように全く規定される、と強く感じた時間だった。

by walk41 | 2019-01-16 15:36 | ドイツのこと | Comments(0)
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