教員研修に出かけ、終了後、担当のスタッフと話をする。
ドイツを訪れたことがあるという話から、「ボーデン湖に行ったことがあります」と伺ったので、近くにある学校博物館や歴史的建物かと思いきや、「湖の葦の群落の生態調査で」と。理科の先生であった。
ドイツ、オーストリア、スイスの国境に接する大きな湖は、観光の名所だが、着眼によって、そんなことへの注目ゆえにここを訪れる人もいるのだなあと、驚かされたことだ。そういえば、アフリカと言ってもよいスペイン領カナリア諸島に、無数に降り注ぐ流星の観測のために訪れた人のレポートを見たことがある。そうした関心も観察能力もほとんどない身としては、打ち寄せる波の音を聞きながら、「薄く切ったオレンジをアイスティーに浮かべて」と口ずさみながらその実、ワインを飲むくらいの楽しみしか知らないのだが。
現実はかくも豊かなのだけれど、少なくとも自分は、そのごく僅かなことにしか目を向けられていないと、改めて思わされた。