電車の吊り広告、 「年金2000万円問題ー年金は破綻しない」とある。他の見出しを見ても、プロパガンダ雑誌と思しきだから期待すべくもないけれど、これもいただけない。年金制度が維持されるということと、それでは暮らしが成り立たないということは何ら矛盾しない。1円でも出る限り、制度としては維持されているからだ。
制度として維持されているだけでは、安心の老後にはならない。そして試算すれば2000万円ほど足りなくなりますよというのが、麻生大臣が受け取りを拒否したという(こんなことが許されるのか)金融庁の報告書の趣旨である。
なのに、「年金制度が立ちゆかなくなる」なんてことを言っていると仮想敵を作り、「そんなことはない、年金制度は維持されるぞ」という構図を作っているのが、この見出しだ。欺瞞である。
「老後のためにいっぱい貯蓄をと焦らなくても大丈夫」なのかどうかが問題であり、それができないのならば「安心の年金」とは言えないという指摘にどう応えるかが求められているのが、今の構図である。にもかかわらず、こんな子どもだましの見出しが堂々と躍っているさまは、まさに悲劇的だ。このすり替えに気づかないだろうと、宣伝を目にする人は馬鹿にされているのだから。