学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

カテゴリ:ことばのこと( 540 )

ことほどさように so.. dass..

もう30年は前のこと、先達と論文を書かせてもらっていたときに、「ことほどさように」という、自分の知らない表現を見つけたので、尋ねたことがある。すると「そんなことも知らないのか」と呆れられ、「(今の若い奴は)言葉を知らないなあ」いう話になったのだ。

それから長い月日が流れ、今に至ってようやく知った。広辞苑、研究社、ベネッセと複数のページを引いたところ、いずれも「ことほどさように」とは英語の“so ..that.. „の訳語からという説を示していることに。まあ、諸説あるのだろうけれど。

なるほど、だから、ぎごちない感じが否めないのか、また、特に知らないからといって恥ずかしいことではなかったのではないか、とも思う。たかが言葉、されど言葉、である。

by walk41 | 2019-01-17 22:14 | ことばのこと | Comments(0)

パスする passen

ドイツ語でよく聞く言葉の一つ、“passen“は、「大丈夫」とか「OK」の意味で用いられます。友人間で“passt?“とは、約束などの確認の意味だし、店で支払い金額がぴったりの時などに店員が客に対してそう言うのです。「お勘定があっています」の意味だけれど、「これでいいよ」と、どうも許可を得たように聞こえて落ち着きません。とまれ、了解できるという意味で捉えてよいでしょう。

おそらく英語でもそういう意味あいでしょうが、「大丈夫」から「通過できる」の意味に転じたのか、翻って日本語のパスには、「試験を無事にパスする」とあわせて、「自分を越えさせる」の意味も含まれます。「私はパス」とは「自分を抜いて進めてちょうだい」ですね。ちなみに、数年前、マレーシアにて知人に連れて行ってもらった店で、一度頼んだ料理をキャンセルしたいと、彼が両手を大きく交差させて「パス!」と店員に言った時には驚かされました。言葉の拡大解釈ではあるものの、その様子から、要らない旨は伝わりました。

元々は外国から入ってきた言葉で、それが外来語として定着する過程で、意味の変化が生じるという現象、とても興味深く思います。ほかの言葉でもきっとあるでしょうね。

by walk41 | 2019-01-13 05:52 | ことばのこと | Comments(0)

ゲマインシャフトという言葉 Bedeutung der Gemeinschaft

ドイツの社会学者、F. テンニエス(1855-1936)の分類、ゲマインシャフト(共同社会)とゲゼルシャフト(利益社会)に拠れば、前者は血縁や友人といった情緒的な結びつきが強い社会を指し、後者は会社や国家といった利益や機能上の結びつきが強い社会を指す。どのような社会であれ、この両者の間のどこかに位置付けることができるだろう点で、すぐれた説明モデルだ。

さて、日本の学校教育では「学びの共同体」と称して、授業づくりや学級経営を進めようという人たちがいる。あるいは、「一人の百歩よりも百人の一歩」「みんなで進む」といった集団主義的な発想もあまねく見られる。けれど、これはイメージ戦略とも言うべき物言いで、理解のミスリードを誘いかねない(そして、おそらく既に誘っている)、いわばズルい言葉遣いである。

なぜなら、テンニエスの分類にもとづけば、学校や学級は、個々の児童・生徒の広い意味での学力獲得を目指す機能的な場所であり、友情を育む、共感して涙を流すといったことは、あくまでも副産物だからである。もし、人工的組織としての学校でゲマインシャフト(共同社会)の性格を強めたいのなら、基本的に同一年齢の人間で学級や学年を編成するのは間違っており、高齢、壮年、青年、子どもと多様であってこそ可能である。もちろん、いわゆる健常者と障碍者、「外国人」などの存在も重要だ。それぞれの得手と不得手を活かし補いあってこそ、助け合いと信頼を育む基盤を築くことができる。

学級ー学年制および教科を軸にした教育課程(内容・方法・時間数)の仕掛けで、投下される資源を最大限に活用して学力獲得を目指す学校は、明らかに利益志向、機能重視の機関である。たとえ盛り上がっていても、時間を気にして授業は次に移らなければならないし、一緒に勉強しても最後の評価は個々に返される。「みんなを代表してテストを受ける」とか「班で協力してテスト問題を解く」ことが許されないのだから。

にもかかわらず、目標や効率を無視しかねないゲマインシャフト的(共同社会的)な姿こそ望ましい学校だと論じるのは、現実を超えて錯覚や幻覚を求める宗教的色彩を帯びている。くわえて、ユートピアとして夢想するだけならまだしも、ゲマインシャフト的ではない状態を指弾するに至っては、認知の錯誤も甚だしい。

けれど、倒錯していることに気づかない、気づきたくない「迷える子羊」は「神様」に帰依しようとする。近代人として求められる主体性の放棄である。そこでは、事実に即して説明を試みるという科学的精神が忘れられ、「こうあるべき」と規範論が先行して、これにそぐわない事実を批判する。ガリレオが地動説を唱えたがゆえに、カトリック教会から聖書に反すると終身刑を命じられた過ちを、繰り返すことになる。学校がゲゼルシャフト的に設計されているのにそれを認めず、ゲマインシャフト的であるべきと唱えることは、自身の信念や信条を事実に優位させる「頭でっかち」「机上の空論」である。

ちなみに、現在のドイツ語のゲマインシャフトGemeinschaft は、「共同体」とは異なる意味でも用いられている。Sportgemeinschaft はスポーツ協会、Gemeinschaftsküche は共同キッチンなど、共通利益の擁護と追求をするための繋がりをも指しており、この点ではゲゼルシャフト的でもある。つまるところ、学校「共同体」論は、学校がゲゼルシャフトとしてデザインされていること、そして、ゲマインシャフト自体にゲゼルシャフト的要素が含まれうることのいずれも軽視、看過する点で、議論に耐えない言説である。



by walk41 | 2019-01-01 13:52 | ことばのこと | Comments(0)

プレパラート Präparat

ドイツ語から日本語に入った言葉は少なくありませんが、プレパラートもそうだとは知りませんでした。

理科の顕微鏡を使った観察の際に出てくるプレパラートという言葉、ドイツ語でPräparat, 英語ならpreparationといってよいでしょう。観察する上での準備ということですね。理科用語上も調製と符合しています。学校にいる時に、このことを教えてほしかったなあ。

いつもの話で恐縮ですが、知らないことは山ほどあれど、そんな一つひとつに出会うことは楽しみでもあります。

In Japanisch weiß ich zwar das Wort „pu-re-pa-ra-to“, als ein Exemplar bei der Beobachting mit Mikroskop, aber habe ich nie gewusst, das Wort kommt aus deutschem Wort „Präparat“ oder aus englischem Wort „preparation“. Das ist eine Überraschung für mich.

by walk41 | 2019-01-01 06:40 | ことばのこと | Comments(0)

パリジェンヌ Parisienne

日本語として定着しているパリジェンヌ、パリ地方の女性という意味だが、「ジェンヌ」になったのは、Paris の“s“に引っ張られたからであり、「ジェンヌ」がオシャレとか美しいという意味はない。なお、宝塚歌劇団の女性を呼ぶならば、「タカラジェンヌ」ではなく「タカライエンネ(Takaraienne)」あたりが適切ということになる。

また、女性のイメージから、パリジェンヌという洋菓子店やケーキ名もあるが、フランス語ではgâteauやcake(ケーキ)は男性名詞なので、パリジャン(あるいはパリジエ)の方が相応しい。もっとも、torte(トルテ)は女性名詞だ。

ドイツ語でのGelände(グランド)やKarte (カード)もそうだが、前者がもっぱらスキー場のゲレンデ、後者が医学用のカルテを指す日本語になっているように、以前の意味を離れて、あるいは限定してと、ことばの意味が変わっていく様がとても面白い。これらを指して、「パリジェンヌなんておかしな言い方」と叫んでも仕方ないしね。不思議だねと感心していればいいのではないだろうか。

by walk41 | 2018-12-26 21:01 | ことばのこと | Comments(0)

そんな語源だったのか So kommt der Name hin

世界遺産に指定されてもいる大聖堂でも有名なケルン、そこに住む人から、この街の名前がCologne、つまり植民地に由来すると聞いて、調べてみるとなるほど次のようだった。

紀元前38年にローマ人がこの地に侵攻、移住。当時は「小さな都市」と名付けられたが、紀元50年には、ラテン語で Colonia Claudia Ara Agrippinensium, ドイツ語で„Kolonie von Claudius, Altar der Agrippinenser“), kurz CCAA. (ローマ第4代皇帝クラウディアの属州、クラウディアの妻アグリッピナの祭壇、CCAAと略記)と称されたことによる(https://www.onomastik.com/on_geschichte_koeln.php、より)。そして現在、Colonia 以下は呼ばれなくなり、ドイツ語ではKölnとなった。

ちょうど、アメリカ合州国の都市の一つ、ロサンゼルス(Los Angeles)が英語ならばL.A.、日本語ならばロスとも呼ばれることに似ているかしら。かつてのローマ人からすれば、Kölnやケルンなどと呼ぶのは失礼千万だろうが、これも時の流れのなせる技、嘆いても仕方がない。

だから、パトカーやオートバイといった和製英語は変と言う向きもあるが(例えば、https://yuitaenglish.com/blog_usa/livinginusa2/1674/)、この御仁自身が「ダブって」と記しているように、しっかり同様の和製英語を遣っているのだから、自己矛盾も甚だしい。いわば伝言ゲームの中で、ことばが次第に変わっていくのは当然だろう。

ドイツ語圏でも、ドイツ語と英語の混じった言葉、Denglisch があり、例えば「ドイツ人しかわからない英語」だと英語話者によって紹介されている(https://www.spotlight-online.de/englisch-lernen-ratgeber/denglische-woerter-die-nur-deutsche-verstehen)。「創造的だけれど紛らわしい」という説明だ。

例えば、
・ケータイは「ドイツ語製英語」でHandy, 英語ではmobile phone,
・郵便物用かばんはBodybag, 英語ではmessenger bag, ちなみに英語でbodybagとは死体袋を意味する。
・プロジェクタはBeamer, 英語ではprojection、
・写真撮影はShooting, 英語ではphoto shoot, ちなみに英語でshootingとは銃の発射を意味する、

とのこと。ちなみのこのサイトの筆者は、「ドイツ語製英語ではなく、英語を遣おう」と締めくくっている。同じようなことを考える人は、どこにでもいるということだろう。


by walk41 | 2018-12-23 20:11 | ことばのこと | Comments(0)

漢字の遣い方 Verwendung im Kanji

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父がドイツ人、母がスイス人の元に生まれ、精力的に活動するものの、1933年のナチス政権の成立以降、「退廃芸術」と名指しされてスイスに移住、画材の調達もままならない中で絵を描き続けたパウル・クレー(Paul Klee, 1879-1940)の作品を見に行きました。

戦後、世界各地で展覧会が開かれ、日本でも行われていますが、1982/83年にシンガポール、マニラ、香港で行われた際の画集が写真のようです。「保羅克利」、何だか勇ましい感じがしますね。翻って、外来語はカタカナにしてしまう日本語、無味無臭に感じるのは私だけでしょうか。デュッセルドルフ20世紀美術館にて。

by walk41 | 2018-12-21 05:15 | ことばのこと | Comments(0)

椎茸 Shiitake

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近所のスーパーマーケットにありました。Shiitake-Pilz 椎茸と表示されています。これも日本語から来ているのかと驚いて調べたら、米国でもフランスでもShiitake として紹介されていました。ことばのグローバル化を感じることです。

Im Supermarkt in der Nähe der Wohnung ist Shiitake-Pilz auf dem Regal gelegt. Es ist ein Staunen, dass das Wort Shiitake, das auf Japanisch hier in Deutschland auftaucht. Dann ich das im Internet recherchiere, ist es klar geworden, das Wort ist auch in Englisch und in Französisch benutzt. Damit fühle ich mich die Globalisierung der Wörter.

by walk41 | 2018-12-11 00:57 | ことばのこと | Comments(0)

不毛だ unsinnig

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jurassicpark film より拝借。

読売新聞HP上の発言小町、世の中の勉強だと読んでいる。

「ジェラシックパーク」じゃなくて「ジュラシックパーク」です・・
という投稿に対して、多くのコメントがその通りと応じ、なかには「コミュニケーション」を「コミニュケーション」と言った人がいたことに対して、世も末と書いている人もいる。おおむね投稿者に同意のようだ。

外国語を日本語で表記すること自体に無理があるのだから、どっちでもいいというコメントもあるが、少数派と見える。私も「どっちでもいい」派だ。すでに日本語なのだから、どちらでも構わない。「コップとカップ」「スコップとスクープ」「グランドとゲレンデ」の違いを説明しにくいのと同じである。同じ意味なのに、輸入のされ方が違った結果、表記の違いになったに過ぎない。

「ジュラシック」という言葉は英語で、フランスとスイスの国境に位置する山岳地帯が、地層学的にジュラ紀にあたるということから来ているが、現地語に即して言えば、名詞の場合、フランス語でJurassique, ドイツ語ではJura, 形容詞の場合、フランス語でjurassien, ドイツ語でjurassischである。ドイツ語では間違っても「ジュ」ではなくどちらかと言えば「ユ」、フランス語では「ジ」または「ユ」という感じだろうか。つまり、いずれにしても「ジュラシック」などではなく、「ユラ」あるいは「ジラ」と書いた方が近い。

さらに問題なのは、後半が「シック」などではまったくなく、「シッシュ」「シエン」という音に近いことだ。つまり、「ジュラシック」は、「ユラシッシュ」「ジラシエン」あたりが妥当である。

えっ、ここでは英語での話をしてるんだって!? でも、ジュラ紀ゆかりの言葉はフランス語とドイツ語、英語は無縁だよ。なぜ英語で言おうとするの? 学校の教科書も、モハメッドがムハンマドに、毛沢東(もうたくとう)がマオツォトンと、なるべく原語に近い発音になっているんだから。外国語すなわち英語という、幼い発想はいい加減に卒業しようよ。そもそも、英語で言ってもjurassic は「ジュラシック」ではなく、「ジュラスィック」に近いんだし。





by walk41 | 2018-11-30 07:12 | ことばのこと | Comments(0)

行動半径 Aktionsradius

新聞を読んでいて気づく、なるほど、行動と半径AktionとRadius という単語がくっついて、行動半径という言葉ができているんだ、と。

そう言えば、過日も、「長蛇の列」はドイツ語でも文字通り、eine lange Schlange(長い蛇)と言うんだと、日本からの客人に物知り顔で話したっけ。

母語以外を学ぶことの効用には、知らず知らずのうちに遣っている母語の成り立ちに気づける、さらに発見できることも含まれる、と知った次第だ。

Ein Wort, Aktionsradius habe ich in der Zeitung gefunden und zugleich habe ich bemerkt, das Wort besteht aus zwei Teile, Aktion und Radius auch in Japanisch. Eine der Wirkungen, die die Fremdsprache zu lernen ist der Bestand der Muttersprache zu merken und sogar entdecken.


by walk41 | 2018-11-22 23:58 | ことばのこと | Comments(0)



榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
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