学校・教職員の現在と近未来 Gegenwart und nähere Zukunft der Schule und ihrer Mitglieder

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視野狭窄ゆえではないか

京都市立洛水中(伏見区)の女性教諭(55)が昨年9月、校内の女子トイレのスリッパを3日間にわたって隠していたことがわかった。教諭は「生徒のスリッパの使い方が悪く、指導の一環で行った」と説明したが、靴下のままトイレを利用した生徒もいたといい、市教委は「不適切な指導だった」として教諭を口頭で厳重注意した。同校などによると、教諭はトイレの清掃指導を担当。校舎3階の女子トイレで、スリッパが散乱したり、洗面台付近が水でぬれたりすることが続いたため、昨年9月26日、スリッパ全5足を用具庫に隠した。

校内の戸締まりをしていた教頭が27日夜にスリッパがないことに気付き、28日朝に教諭に戻すよう指示。教諭は全校集会でスリッパの適正な使用を呼びかけた上で、同日夜にスリッパを戻した。教諭は「再三注意したが改善されず、生活上の小さな乱れを見逃してはいけないと思ってスリッパを片付けた」と話しているという。(読売新聞、20180228)

……

うーむ。同教諭によれば「生活上の小さな乱れを見逃してはいけない」とのことだが、家のトイレでスリッパに履き替えるところは今どれくらいあるのだろうか。実生活に必ずしも適用できないような事柄を指して、「生活上の」と言われても困る。バリアフリーの家でトイレスリッパを用意することの意味はあるだろうか。


私が勉強不足なだけなのだろうが、そもそもトイレの内外で靴を替えることの意味はなんだろうか。トイレの床を歩いた靴は不衛生という話ならば、それを支持する実証データはあるのだろうか。いわゆる上履きは相当期間、洗わずに学校で使う代物で、私に言わせればかなり不衛生だと思う。


また、京都市内の中学校には、いわゆる土足のまま校舎内を歩く学校もあり、その場合はトイレ用のスリッパはなかったかと記憶している(校長室に入る時には、別途、マットとスリッパが置いてあったりする)。そんな風に生活していても、衛生上の問題が起こったとは報じられていないように思う。こういう時に外国話を出すのも上品ではないが、ドイツの学校でトイレで履き替えないから不衛生など思いつきもしないことだろう。


ましてや、トイレスリッパを隠してどんな効用を期待しているのだろうか。ほとんど嫌がらせと言って良いのでは。ドイツの生徒だったら、阿呆らしいとそのまま入ったり、別の靴を持って来たり、自分で判断して行動すること必至である。


こんなことに血道をあげるより、学校に考えてほしいことがある。それは、来客用のスリッパについて、いったい何のギネス記録を狙っているのか、スリッパを重ねては往往にして、柱のように長く長くつくねていることの汚さである。床に触れたスリッパの底が別のスリッパの足裏部分に収納される。これを不衛生と言わずに何だというのか。こんな「何となくの」習慣を放置していて、生活上の乱れなどよく言えるものだと思う。この汚さに無感覚なこと、相当に乱れていると思いませんか。


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by walk41 | 2018-02-28 14:27 | 学校教育のあれこれ | Comments(0)

貧困の現実味

ドイツのきれいな町並みを歩くと心地よいが、ホームレス(Obdachlose)とおぼしき人が時折、目に入るのは辛い。駅近くやマーケットの近くに座り、帽子や小箱を前に置いて物乞いをしている。あるいは、小銭を無心されることもある。

駅構内で二十代と思われる青年が、通りかかる人に声を掛けていた。無視されることが多いようだったが、足を止めたある女性は、彼に聞き直した後、バッグから財布を出してしぶしぶ小銭を渡していた。あるいは、切符を買っておつりを取っていたら、まだ成人していないのではないだろうか、小柄な男の子から「食べ物を買うために、少しお金をください」と私も求められた。一瞬は躊躇したが「せっかくだけれど…」と断った。食い下がってはきたけれど。

また、物乞いではないけれど、中央駅などではごみ箱をのぞき込み、中をさぐる人を二人見た。いずれも年配の男性と女性である。男性はごみ箱にステッキを突っ込み何かを探していた。また女性はきっと手慣れているのだろう、懐中電灯を手にしてごみ箱の中をのぞき込んでいた。夕方のラッシュ時、多くの人が行き交う中である。ペットボトルや缶飲料にデポジット制が取られているここでは、これを集める人(Pfandflaschesammler)がおり、1本、25セント(約30円)でスーパーマーケットなどで引き取ってくれるから、頑張って集めれば少しのお金にはなるからではないだろうか。

さて、相対的貧困率の国際比較をまとめてくれたページがある(https://toukei-source.com/social-security/relative-poverty-rate/)。これによると2010年代(ちょっとわかりにくいが)の日本のそれは約16%、対してドイツは10%に満たないくらいである。ここからは、日本の方が相対的貧困率は明らかに高いことになるが、ごく限られた経験の限り、私が南西ドイツで見た様子とはずいぶんと違うなあと思わざるを得ない。

たとえ、貧しくても日本では物乞いはしないのだといった、地域差の説明も可能だろうが、それでもなお、明らかに汚れた服装で足取りも覚束なく、弱々しい声で物乞いをする人や、黙ってこそいるけれど、虚ろな目で傍らに座り込んでいる人を見ると、総じて日本の方が豊かで、少なくとも極端に貧しい人は少ないのではないかと感じる。

物乞いに会ったと仲のいいドイツ人の友人に話したら、こう返ってきた。「この州の社会保障は充実していて、物乞いをする必要はない。そうした人々は一部の外国人を含む、犯罪まがいのグループだったりすることもあり、哀れみを強調するために、どこからか赤ちゃんを連れてくることもある。決してお金を渡してはいけない。」まあ、そうなんだろうけれど、目の当たりにすると結構しんどいなあ。

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by walk41 | 2018-02-28 09:15 | ドイツのこと | Comments(0)

スポーツの授業の「見学」

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南西ドイツの中等学校、5年生のスポーツの授業だが、体育館シューズを忘れた男の子がいた。彼は授業の見学を余儀なくされたが、右側の隅のほうに見えるだろうか、マットを重ねた上に、文字通り横になって、クラスメイトの様子を眺めている様子が。

教員ももちろん、その格好が目に入っているにもかかわらず、彼に何も言うことはなかった。授業に参加している生徒たちに対しては、あれこれの注意やアドバイスを与えていたけれど。

皆さんの中には、子どもの頃を振り返って、思い出す人はいないだろうか。体操着などを忘れて授業に参加できず、その代わりに隅っこのほうで体育座りをして授業を見ていることを要求されたことを。まるで晒し者かのように扱われ、恥ずかしい思いをさせることで、次回は忘れ物をしないようにという教員の「指導」上のマイルール、もっと言えば傲慢で独りよがりな判断の犠牲になったことはなかっただろうか。

翻って、写真のような光景に出くわすと、あの時の経験は一体何だったのだろうかと悲しく思い出される。これでもいいじゃないか、きっと辛い思いをして残っているのだから。

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by walk41 | 2018-02-27 15:23 | ドイツのこと | Comments(0)

故障(Defekt)

なんだかんだと言っても、会いたい友人、知人がおり、知的刺激を与えられる対象がそこにあるから、繰り返しドイツを訪れているのだけれど、いろいろなものがいわば当たり前のように故障していることには辟易させられる。

今回わずか1週間ほどの滞在なのに、鉄道絡みだけで次のような故障に出合った。
①ドイツ鉄道の券売機、お札を飲み込む箇所が故障しており、切符が買えず(切符を買えるほど、硬貨をたくさん持っていなかったから)。

②改札がない国なので、切符を買ったら、刻印機に差し込まなければならないが、この機械が故障。以前に同様のことがあり、刻印機を経ない切符を持っていたら、車内で検札にあった。その旨を話したら、ボールペンでサインをしておくようにと言われた(「そういう問題じゃないだろう」とツッこむしかない)。

③駅のエレベータが故障。足の不自由な人、大きな荷物を抱える人には、アクセス度がゼロである。

④乗ろうと思った車両の開閉ボタンが故障しており、開かず。慌てて(もう慣れたものだが)別の車両に急いだ、

⑤エスカレータ途中、非常停止ボタンだろうか、「故障」の張り紙あり。

⑥ドイツ版新幹線ICEが、電気系統の故障で運行を取り止め(自国万歳ではないのだけれど、日本の新幹線ではまったくの想定外。きっと過去50数年間、一度もないと思う)。

⑦ICEよりは遅い特急であるICが途中で停止。寒さのあまりなのか「電力が足りないため」と車内アナウンス。

とても皮肉なことに、故障(Defekt)というラベルシールは綺麗に印刷されたものが用意されている(そんなものを予め用意しているのか…)。かくも故障が多いことの現れ、とは私の見立てだが、「当たり前に駅が動き、電車が時間通りに走っている」ことに馴染む多くの日本在住者から見て、こんな故障が驚くべきということに、ドイツに住むひとたちは驚くかもしれない。

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by walk41 | 2018-02-27 15:08 | ドイツのこと | Comments(0)

ここも有料だった

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昨年、別の街の市立図書館を訪れた際も同様でしたが、この街でも公立図書館の貸し出しは有料、年間20ユーロ(約2600円)です。

写真にある機械で図書館利用カードに入金するとともに、別の機械で借り出し、そして返却も機械で行います。読み終えた本やDVDが、バーコードを読み取りながら飲み込まれていくのです。

こうした全自動化についても驚かされますが、公共図書館で借りることが有料であって良いのかどうか。そこで読む限りは無料で誰もが来れるし、延滞金制度もあるから、より自覚的に利用してもらえて良いのかも、とも思わされます。みなさんはどう考えますか。

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by walk41 | 2018-02-24 13:54 | ドイツのこと | Comments(0)

決まっても意思表明

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州都の目抜き通り、平日の夕方、州政府が進める大規模プロジェクト“Stuttgart21“に反対する人たちの集会が開かれていた。

このプロジェクトは、中央駅を中心に数年をかけて改修、開発するもので、これに要する費用は当初、65億ユーロと言われていたものの、その後77億ユーロに修正され、2018年1月にはさらに増えて82億ユーロ(約1兆1000億円)かかるとされるに至っている。人口1150万人、州都では100万人におよそ届かない州にとっては、全てではないにしても決して軽くはない負担だろう。

この集会はこうした多額の費用に対する反対を含め、環境への負荷などを加えた、反対の意志を表明する「月曜日のデモ」として定着しているという。このテーマは大きな議論となり、住民投票まで行われた結果、僅差だったと思うが賛成が上回ったことで、工事が始まった経緯を持っているけれど、それでもなお、反対の意志を示し続けていることをすごいなと思う。

アメリカ合州国の大統領選挙で結果が出たのちも、反対のデモが行われたことが報じられたが、これにも通じるだろう。選挙や住民投票で結果が出ようとも、自らの意志はアピールし続けるという態度と能力も、民主主義を支える一つと考えるからだ。

「投票に行きましょう」くらいを目標にせざるを得ないのが現実かもしれないけれど、そんなものは一つの通過点に過ぎないという太っ腹さも優れて大切と感じる。民主主義って、もちろん選挙の時だけじゃないよね。「主権者教育」ってどういうことかしら。

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by walk41 | 2018-02-20 14:06 | ドイツのこと | Comments(0)

寛容さー多様性を認める/求める

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州都の目抜き通りに、チェス盤を二枚広げて、通りかかる人相手にチェスをしている男性がいた。「寄付を」と小箱に記されていたので、何かの募金活動かと思いきや、https://www.stuttgarter-nachrichten.de/inhalt.schachspieler-vom-schlossplatz-schach-hat-mein-leben-gerettet.a2b8976f-9e3a-4986-9bfa-b853f4053352.html で2017年7月の地元紙記事を読んで、おおよそ次のような方だということがわかった。

ドイツ生まれのカザフスタン人の同氏は、長らく宿無しの生活をしたのち、職場で事故に遭い片目を失う。その後、悪い友人とアルコールによって「地獄のようだった」時間を過ごした。

しかし幸運にも、チェスを教え、チェス盤を贈ってくださった方がいたお陰で、チェスを通じて生活リズムを建て直し、すでに11年以上、アルコールを口にしていないのだと。ほとんど毎日ここに場所を構えて、通行人相手にチェスをしている。チェスすることで人との繋がりが持てる。ここにいることの市の利用許可も得ている。勝ったことを記した彼のリストは、増えるばかりである。

少ない日では4ユーロ、多くても一日、50ユーロほどの稼ぎだが、彼は仕事ではなく、自分と短い時間、チェスをしたことに対する寄付を求めているのだという。社会的な弱者向けの公共住宅(Sozialwohnung)に住む彼は「自分は物乞いではない」と、お金を乞うたり(この同じ日に、中央駅近くで「50セント(約65円)持ってないか。」と物乞いにあった)、瓶集めをする人とは違うことを強調する。「チェスは人生そのもの、時に黒、時に白だ」「ときどき、不幸な人もやって来るが、その時はわざと負けてやるんだ」とも語る人生哲学を持つに至った彼の遍歴を、何となく想像する。

なるほど、いわゆる大道芸人の延長で理解すればいいのだろうか。こうした人を認め、受け入れる社会のようなものに驚かされ、そこにあるだろう強い寛容さを思う。

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by walk41 | 2018-02-19 13:31 | ドイツのこと | Comments(0)

「タバコを止めよう」なのだけれど

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ドイツでのタバコの値段は6〜7ユーロほど、800〜900円と日本のそれよりずいぶんと高いと思う。けれど見かける限り、タバコを吸っている人は珍しくないし、マーケットでは写真のように、いろいろな銘柄が売られている。

興味深いのは、他の国でも見かけることだが、タバコのラベルにおどろおどろしい写真が掲載されていることだ。「タバコはあなたの肺を冒します」という文字と血を吐く写真、「タバコは心臓発作を引き起こします」とチューブに繋がれてベットに横たわる写真、「タバコをやめましょう、愛する人がさらに生きるために」と棺桶に納まる男性とその傍らに赤ん坊を抱いた女性の写真、が並ぶ。

非喫煙者としては、この写真を見てまだ吸うかと驚かされるが、喫煙者にとってはあまり効果がないのかもしれない。日本でも激しく議論されている、飲食店での喫煙について、ここで全面禁煙となっているのはありがたいけれど、レストランの戸口に立つスモーカーの姿はいたって普通の光景でもある。

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by walk41 | 2018-02-19 00:43 | ドイツのこと | Comments(0)

よりよい授業のために

榊原禎宏・清水久莉子「授業を観るとはどういうことか-ドイツにおける『エビデンスにもとづく授業診断とその開発方法』の提案」『京都教育大学紀要』125号、2014年)を記して、早くも4年近く経った。この論文は、ドイツの常設文部大臣会議(KMK)から委託された研究として、2011年に始まったEMU(エビデンスにもとづく授業診断とその開発方法)を紹介するものだったが、このプロジェクトは継続、進化しており、20178月現在、Ver.6.02を数えている。

私の見るところ、このプロジェクトは授業の主観的性格と客観的指標という基本問題を視野に入れており、狭義の方法論に留まらない魅力があると思う。そこで、ブログの場を使って少しずつこのプロジェクトを辿り、いまに至る理念と具体を捉えたい。よろしければ、みなさんにもおつきあい願えれば有り難いです。


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診断:よりよい授業へ

授業の質を向上させるためのKMKのプロジェクト“EMU”が、試行を成功裏に終えて全州でスタートした。

授業の強みと弱みを知ることなしに、その質を上げることは考えられない。試行を成功裏に終えたEMUプロジェクトが、新たに全州でスタートした。それは、教員の診断能力と授業の質を向上させるものである。EMUは“エビデンスにもとづく授業診断の方法”であり、KMKの委託によりKoblenz-Landau大学のProf. Dr. Andreas Helmkeを中心に教育科学者によって開発された。

EMUには、2つの梃子(レバー)がある。その一つは、授業に関する卓越した調査と実証的評価および他者との意見交換である。これに加えて、ガイドブック、授業評価に関する質問紙、そしてデータを素早く僅かな労力で処理し、可視化できるソフトウエアが役立つ。EMUは、三角測量法、反復測定、基準化された構成にもとづいている。三角測量法については、質問紙とソフトウエアによって集計され、互いの関係を見比べる生徒、授業者自身、授業を観察する同僚教員という三者の視点が盛り込まれる。反復測定は、授業改善のための努力が実際に効果的かどうかを示すものである。基準化された構成は、学校の時間と資源に応じて、授業診断を最初は小規模に始めることを支援する。たとえば、授業の進行、学習を支援する風土と動機づけ、明瞭さと構造性、活動性、結果という5つの眼目で構成される診断のための質問紙について、一回だけ、あるいは一点についてから始めることも可能だ。授業を見る際の観点を加えることや、観察する際の課題を加えることも問題ない。ソフトウエア、質問紙とガイドブックは、www.unterrichtsdiagnostik.info にて無料でダウンロードできる。

連絡先

Koblenz-Landau大学 発達心理学・教育研究 Prof. Dr. Andreas Helmke

E-Mail: helmke@uni-landau.de


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by walk41 | 2018-02-16 11:21 | ドイツのこと | Comments(0)

教員就職率

この指摘は、おそらくどなたかなさっているだろうから、珍しいものではないと思う。けれども、およそ論理的に意味があるとは思われない数値が公表され、データとして一人歩きすること恐ろしさを感じるゆえ、強調したい。

文部科学省がまとめる「卒業生の大学別就職状況(教員養成課程)」がある。教員養成大学・学部関係者には馴染んだ、また頭の痛い数値だが、大学ごとに卒業生のうち何人、何パーセントが教員として就職したかを示している。大学単位に数値を並べ替えさせて、どの大学が教員就職に強いか、あるいは弱いかを噂話させ、大学の宣伝や「もっと頑張れ」メッセージの材料にしようというものだ。

このデータの問題は次の点にある。これだけ問題のある統計も、少ないのではないかと思う。

①データの括り方が不適切。ここでの教員としての就職は、学校の幼稚園、初等・中等教育学校の教員(養護教諭、栄養教諭を含む)として採用、および臨時的任用(病休、産休、育休などの代替教員等として任用)された場合を合わせたものである。たとえば、前者が6割、後者が1割の場合と、極端だが両者が逆の場合、意味はまったく異なるにもかかわらず、数値としては同率になる。ちなみに、ここで任用とあるが、任用とは公務員の場合のみ該当する行政用語、私立学校に採用された場合は含まれるのだろうか。

②資格取得と就職との区別がない。教員としての就職は、教員資格の取得とは別物である。たとえば、ドイツのように州政府が試験を行って教員資格を認定する場合は、試験が同一だから、その合格率を競うことに意味がある。日本では医師免許や看護師免許がこれに相当する。しかし、日本の教職課程は課程認定制度のもとでの「開放制」と大学での単位取得によって免許要件を構成するから、大学間の差異をなくせない限り、比べても意味がない。それを敢えて比べるのならば、大学入学者に対する卒業者(免許取得者)の割合を並べることは可能だろう。つまり、4年間でしっかり単位を取らせて卒業させた大学ほど優れているという評価である。けれど、はたしてこれは適切だろうか。

③就職者数は採用者数であり、変動する。②とも重なるが、教員への就職は、主として公立学校を人的に管理する都道府県と政令指定都市の教育委員会の採用数に依る。教職人口ピラミッドを大きな背景に、各年度の採用者数が決められるのであり、35年間ほどの年齢層を含む教員構成に対して、大学ができることはほとんどない。大学が頑張ろうと(逆に言えばそうでなかろうと)採用数の前にはどうしようもないからだ。景気が良くなれば卒業生の採用率は高まり、景気が悪くなれば低下するのと同様である。いずれの分野であれ、大学の努力が採用数に直結するわけではない。

ちなみに「○○大学は教員養成を熱心にされているので、無条件で○人は採用しましょう」といった、贔屓も見込めない。戦前の指定学校や許可学校の制度を復活させるならば話は別だが、大学間の平等性を前提にする限り、無理な相談である。

以上のような無茶をはらみながら、数値化され、もっともらしいデータとして跋扈することになる。「ウチは教員就職率○年続けて、上位三位に入っています」と高校生向けの宣伝に使われたり、「ウチは下から数えた方が早いくらいだから、教員採用試験を意識した授業に励むように」と教授会あたりで発言があるかもしれない。

こんな状況を放置して恥ずかしげない官僚主義の悪弊(一度決めると、簡単には変更しない)、あるいはこのデータの発案者と支持者の学力の低さに愕然とする。こんなものを比べても仕方ないやん。



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by walk41 | 2018-02-15 14:15 | 大学のこと | Comments(0)



榊原禎宏のブログ(Yoshihiro Sakakibara Blog) 教育学の一分野、学校とその経営について考えます(um die Schule und ihre Verwaltung und Management)
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